乾燥設備作業主任者|選任が必要な乾燥設備の条件と技能講習の受講資格・職務

技能講習

乾燥設備作業主任者を選任しなければならないかどうかは、会社の規模や作業者の人数では決まりません。乾燥設備1台ごとの条件で決まります。乾燥させる物が危険物等なら、内容積1立方メートル以上の設備が対象です。危険物等以外なら、燃料の最大消費量か電力の定格消費電力が基準以上の設備が対象です。これらの設備で物を加熱乾燥する作業では、乾燥設備作業主任者技能講習を修了した人から作業主任者を選ぶ義務があります(労働安全衛生法施行令第6条第8号、労働安全衛生規則第297条)。

この記事は、総務・人事・安全衛生の担当者に向けたものです。工場の乾燥炉・乾燥機・乾燥室が対象になるのか、誰に講習を受けさせるのか、選任した人に何をさせるのか、ほかに何を出すのか、といった迷いに答えます。条文は、2026年10月19日時点で厚生労働省の法令等データベースに載っているものを確認しています。

選任が必要になる乾燥設備の条件

法令でいう「乾燥設備」とは、熱源を使って物を加熱乾燥する乾燥室と乾燥器のことです(令第6条第8号イ)。ただし、火薬類取締法第2条第1項に規定する火薬類を乾燥するものは除かれます。部屋として造った乾燥室も、装置としての乾燥器も含まれます。次の表のどちらかに当たる設備で物を加熱乾燥する作業では、作業主任者を選任しなければなりません。

区分 乾燥させる物 熱源 対象になる基準
令第6条第8号イ 危険物等(令別表第一に掲げる危険物と、これらの危険物が発生する乾燥物) 問わない 内容積が1立方メートル以上
令第6条第8号ロ 危険物等以外の物 固体燃料 最大消費量が毎時10キログラム以上
令第6条第8号ロ 危険物等以外の物 液体燃料 最大消費量が毎時10リットル以上
令第6条第8号ロ 危険物等以外の物 気体燃料 最大消費量が毎時1立方メートル以上
令第6条第8号ロ 危険物等以外の物 電力 定格消費電力が10キロワット以上

令別表第一の危険物は5つに分かれています。爆発性の物(第1号)、発火性の物(第2号)、酸化性の物(第3号)、引火性の物(第4号)、可燃性のガス(第5号)です。どの物質が当たるかは、別表第一に載っている物質名で確認します。

見落としやすいのは、イとロで見るところがまったく違う点です。イが見るのは容積だけで、熱源の種類は問いません。危険物等を乾燥する設備なら、電気ヒーター式でも内容積が1立方メートル以上あれば対象です。ロが見るのは熱源の大きさだけで、容積は関係ありません。

2025年・2026年の改正との関係も確認しておきます。令和7年法律第33号による改正労働安全衛生法は、2025年5月14日から段階的に施行されています。山形労働局の概要では、主な改正項目として次の5つが挙がっています。個人事業者等の安全衛生対策、ストレスチェックの50人未満の事業場への拡大、化学物質対策、登録機関や検査業者への不正対応、高年齢者の労働災害防止です。確認した時点の条文では、令第6条第8号にも、乾燥設備について定めた労働安全衛生規則(以下「安衛則」)第293条から第300条にも、2025年・2026年の改正は入っていません。

自社の設備が該当するかを判断する手順

設備台帳を見ながら、次の順で確認すると判断がぶれません。

  1. 設備を洗い出す。乾燥炉、焼付炉、乾燥機、乾燥室など、熱を加えて物を乾燥させる設備をすべて挙げます。火薬類を乾燥するものは定義から外れます。
  2. 乾燥物が危険物等かを確認する。乾燥させる物そのものだけでなく、乾燥中にその物から危険物が出ないかも確認します。手がかりになるのは、原材料や塗料・溶剤のSDS(安全データシート。化学品の危険性や成分が書かれた文書)です。
  3. 危険物等なら内容積を見る。仕様書や図面で内容積を確かめ、1立方メートル以上かどうかを判断します。
  4. 危険物等でなければ熱源を見る。燃料なら最大消費量を見ます。単位は固体がキログラム、液体がリットル、気体が立方メートル(いずれも毎時)で、燃料ごとに違うので注意してください。電力なら、銘板や仕様書で定格消費電力を確認します。
  5. 根拠を記録し、迷う点は所轄の労働基準監督署に確認する。SDSや仕様書の値など、判断の根拠を設備ごとに残しておきます。設備の更新や監督署の調査のときに説明しやすくなります。

条文は「次に掲げる設備による物の加熱乾燥の作業」と書いており、基準を設備ごとに定めています。小型の乾燥機を何台も並べている場合や、熱源を複数持つ設備のように、条文だけでは扱いを決めきれないこともあります。その場合は自社で判断せず、監督署に確認してください。

塗装・食品・化学工場ではどう考えるか

判断の分かれ目は業種によって違います。乾燥物と熱源の組み合わせを見て、イとロのどちらを当てはめるかを決めます。

業種 代表的な設備 判断の分かれ目 あわせて確認すること
塗装 塗装後の焼付乾燥炉、乾燥室 塗料に溶剤が含まれ、乾燥中に蒸発する場合は、乾燥物が「危険物が発生する乾燥物」に当たるかを塗料のSDSで確認します。当たればイ(内容積)、当たらなければロ(熱源)で判断します。 塗装作業そのものに、有機溶剤作業主任者の選任が必要かどうか(令第6条第22号)
食品 原料・製品の熱風乾燥機、乾燥室 乾燥物が危険物等に当たらなければ、ロの燃料・電力の基準で判断します。引火性の物を含む原料を乾燥する場合は、イに当たるかどうかも検討が必要です。 ロが挙げている熱源は燃料と電力だけです。蒸気や温水を熱源にしている場合の扱いは、監督署に確認してください。
化学 製品・中間体の乾燥機、乾燥室 危険物を乾燥する場合や、乾燥物から危険物が出る場合はイに当たり、内容積1立方メートル以上が対象です。 令第9条の3の「化学設備」の定義からは、乾燥設備が除かれています。化学設備の規定とは別に、安衛則第293条から第300条の乾燥設備の規定を確認します。

化学工場では、危険物を製造したり取り扱ったりする作業の「作業指揮者」(安衛則第257条)との関係も押さえておきます。この条文は、令第6条第8号の作業を対象から除いています。そのため、乾燥設備作業主任者を選任する乾燥作業では、指揮と点検は乾燥設備作業主任者が担うことになります。

塗装工場では、乾燥設備作業主任者と有機溶剤作業主任者の両方が必要になる場合があります。有機溶剤作業主任者の講習については有機溶剤作業主任者講習の記事で扱っています。

誰を選任できるか:技能講習と受講資格

乾燥設備作業主任者になれるのは、乾燥設備作業主任者技能講習を修了した人だけです(安衛則第16条・別表第一、第297条)。免許による選任の区分はありません。ほかの作業主任者の講習を修了していても、代わりにはなりません。受講資格は、安衛則別表第六で次のように決められています。

区分 学歴など 必要な実務経験
1 問わない 乾燥設備の取扱いの作業に5年以上
2 大学または高等専門学校で理科系統の正規の学科を専攻して卒業(大学改革支援・学位授与機構による学士など、別表第六に定める者を含む) 卒業後、乾燥設備の設計、製作、検査または取扱いの作業に1年以上
3 高等学校または中等教育学校で理科系統の正規の学科を専攻して卒業 卒業後、乾燥設備の設計、製作、検査または取扱いの作業に2年以上
4 その他厚生労働大臣が定める者 厚生労働大臣が定めるところによる

講習の科目と時間は、乾燥設備作業主任者技能講習規程(昭和47年労働省告示第102号)で決まっています。講習はすべて学科です。

講習科目 講習時間
乾燥設備及びその附属設備の構造及び取扱いに関する知識 4時間
乾燥設備、その附属設備等の点検整備及び異常時の処置に関する知識 4時間
乾燥作業の管理に関する知識 5時間
関係法令 2時間

講習の最後には、筆記の修了試験があります。申し込むときは、技能講習受講申込書(様式第15号)を講習を行う登録教習機関に出します。修了すると、その機関から技能講習修了証(様式第17号)が交付されます。受講料や日程は機関ごとに違うため、この記事では扱いません。

修了証をなくしたり傷めたりしたときや、氏名が変わったときは、交付を受けた登録教習機関に様式第18号で再交付や書替えを申し込みます。交付元の機関が業務をやめている場合は、厚生労働大臣が指定する機関に申し込み、修了を証明する書面を受け取ります(安衛則第82条)。人事記録に修了証の番号と交付機関を控えておくと、手続きが早く進みます。

乾燥設備作業主任者の職務と交替勤務での配置

事業者は、乾燥設備作業主任者に次の事項を行わせなければなりません(安衛則第298条)。職務が生じるタイミングごとに整理すると、次のとおりです。

タイミング 行わせる事項
乾燥設備を初めて使うとき、乾燥方法や乾燥物の種類を変えたとき 作業方法をあらかじめ労働者に知らせ、その作業を直接指揮する
乾燥設備や附属設備に不備を見つけたとき 直ちに必要な措置をとる
随時 内部の温度、換気の状態、乾燥物の状態を点検し、異常があれば直ちに必要な措置をとる
常時 乾燥設備がある場所を整理整とんし、可燃性の物をみだりに置かない

24時間運転の工場では、直(交替勤務の勤務帯)ごとに作業主任者が必要かどうかがよく問題になります。昭和48年3月19日付け基発第145号には、「必ずしも各直ごとに選任させる必要はない」という解釈があります。令和5年2月22日付けの厚生労働省通達(基安安発0222第1号ほか)は、この解釈の意味などを次のように整理しています。

  • 選任が求められるのは、法令上の職務を行う必要がある直です。例として、運転開始時や作業内容の変更時を含む勤務時間帯が挙げられています。
  • 職務を行う必要がない直には選任は不要で、現場に置く必要もありません。
  • すべての作業主任者に共通する整理として、作業計画の策定など、現場以外でできる職務まで現場で行う必要はありません。

なお通達は、3つ目の現場以外でできる職務についての整理は、現時点で現場の取扱いを変えるものではなく、従来の取扱いをはっきりさせたものだとしています。

同じ場所で2人以上を選任したときは、職務の分担を決めます(安衛則第17条)。選任したら、氏名と行わせる事項を作業場の見やすい場所に掲示するなどして、関係する労働者に知らせます(安衛則第18条)。掲示や分担の決め方は作業主任者の選任と氏名の掲示の記事にまとめています。

選任とあわせて必要な届出・点検・記録

総括安全衛生管理者などと違い、作業主任者の選任について、安衛則第16条から第18条には労働基準監督署への報告の定めがありません。一方、乾燥設備そのものには届出と点検の義務があります。

項目 対象 時期・期間 根拠
計画の届出(様式第20号) 令第6条第8号イまたはロの乾燥設備(6か月未満で廃止するものを除く) 設置・移転するとき、主要構造部分を変更するとき、所轄労働基準監督署長へ 労働安全衛生法第88条第1項、安衛則第85条・第86条・別表第七
定期自主検査 乾燥設備とその附属設備 1年以内ごとに1回。1年を超えて使わない期間は不要だが、使用を再開するときに実施 令第15条第1項第7号、安衛則第299条第1項・第2項
検査結果の記録 上記の自主検査 3年間保存 安衛則第299条第3項
補修 検査で異常が見つかった設備 補修など必要な措置をとるまで使用できない 安衛則第300条

計画の届出には、記載事項を書いた書面と図面を添えます(安衛則別表第七)。書面に書くのは、種類・型式・能力・製造者・製造年月、乾燥物の種類と性状、加熱の方法、温度・圧力などの使用条件、構造・材質・主要寸法、主要な附属設備(換気装置・温度測定装置・温度調整装置など)の内容です。図面は、構造図と、設置場所の周囲の状況を示す図面です。設備を発注する段階でメーカーにこれらの資料を頼んでおくと、準備が進めやすくなります。

定期自主検査では、次の項目に異常がないかを確認します。

  • 内面・外面・内部のたなや枠などの損傷、変形、腐食
  • 危険物乾燥設備の排気設備
  • 燃焼室など点火する箇所の換気設備
  • のぞき窓・出入口・排気孔などの開口部
  • 温度の測定装置と調整装置
  • 内部の電気機械器具や配線

記録には、検査年月日、方法、箇所、結果、実施者の氏名、補修などをした場合はその内容を残します。

よくある質問

Q. 作業主任者が要らない小さな乾燥機なら、乾燥設備の規定は何もかかりませんか。

A. かかります。安衛則第294条(構造)と第296条(使用)は、令第6条第8号の規模に当たらない乾燥設備も含めて定めています(第294条には、爆発や火災のおそれがないものについての例外があります)。危険物乾燥設備(危険物や、危険物が発生する乾燥物を加熱乾燥する設備)も、安衛則第287条第4号の定義に規模の条件はありません。そのため、熱源に直火を使わないこと(第294条第10号)などの規定がかかります。定期自主検査を定めた令第15条第1項第7号も「乾燥設備及びその附属設備」と書いており、規模の限定はありません。

Q. 電気式で定格消費電力が10キロワット未満なら、選任は要りませんか。

A. 乾燥物が危険物等でなければ、ロの基準に届かないので令第6条第8号の作業には当たりません。ただし、危険物等を乾燥している場合はイが当てはまります。熱源の種類に関係なく、内容積が1立方メートル以上なら選任が必要です。

Q. 有機溶剤作業主任者の講習修了者を、乾燥設備作業主任者に選任できますか。

A. できません。安衛則別表第一では、令第6条第8号の作業の作業主任者になれるのは、乾燥設備作業主任者技能講習の修了者だけです。塗装工場のように両方の作業がある職場では、それぞれの講習の修了者が必要です。

Q. 交替制の工場では、何人に講習を受けさせればよいですか。

A. 必要な人数は、職務を行う必要がある直の数と、休暇や異動に備えた交代要員から決まります。前述の令和5年の通達のとおり、職務の必要がない直まで選任する必要はありません。運転開始や乾燥物の切替えがある直を勤務表で洗い出し、その直には必ず修了者がいる体制を組みます。

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まとめ

  • 対象かどうかは乾燥設備ごとに判断します。危険物等を乾燥するなら内容積1立方メートル以上、それ以外は燃料の最大消費量(毎時10kg・10L・1立方メートル)か定格消費電力10キロワット以上が基準です。
  • 判断は、乾燥物が危険物等か(SDSで確認)を見てから、容積か熱源の値(仕様書・銘板で確認)を見る順番で行います。迷う設備は監督署に確認します。
  • 選任できるのは乾燥設備作業主任者技能講習の修了者だけです。受講資格は、取扱い経験5年以上、または理科系学科の卒業と1〜2年の実務経験などです。
  • 職務は、初めて使うときや変更時の周知と直接指揮、不備への措置、温度・換気・乾燥物の随時点検、整理整とんです。職務の必要がない直まで選任する必要はありません。
  • 令第6条第8号の規模に当たる乾燥設備は、設置するときなどに計画の届出が要ります。乾燥設備とその附属設備は1年以内ごとに1回定期自主検査を行い、記録を3年間保存します。

出典

  • 労働安全衛生法施行令 第6条第8号、第9条の3、第15条第1項第7号(厚生労働省 法令等データベース)
  • 労働安全衛生規則 第16条〜第18条、第79条〜第82条、第85条・第86条、第256条・第257条、第287条、第293条〜第300条、別表第一、別表第六、別表第七(厚生労働省 法令等データベース)
  • 乾燥設備作業主任者技能講習規程(昭和47年労働省告示第102号)第2条・第3条
  • 「デジタル原則に照らした規制の一括見直しプラン及びデジタル原則を踏まえたアナログ規制の見直しに係る工程表を踏まえた対応等について」(令和5年2月22日 基安計発0222第1号・基安安発0222第1号・基安労発0222第1号・基安化発0222第3号)厚生労働省 法令等データベース、安全衛生情報センター
  • 山形労働局「2025年5月14日から、改正労働安全衛生法、作業環境測定法等が段階的に施行されています」

制度は改正されます。業種・事業場の規模・作業内容によって扱いが変わるため、実際の適用は所轄の労働基準監督署・都道府県労働局・消防署・講習の実施機関で必ずご確認ください。

【資格・講習 合格ナビ 編集部 監修】技能講習・国家資格の専門メディア編集部が監修。合格率・取得費用・勉強法に関する情報を提供しています。
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