監理技術者講習を受けていなければならないのは、専任で置く監理技術者です。専任特例で置く監理技術者も含みます。その人は、監理技術者資格者証(以下「資格者証」)の交付を受けていることに加え、国土交通大臣の登録を受けた講習を修了していなければ選任できません(建設業法第26条第5項)。講習の有効期限は、令和3年1月1日以降、受講した年の翌年の1月1日から数えて5年後の12月31日までです。
この記事は、社員の資格や講習の期限を管理する総務・人事・安全衛生の担当者向けです。「誰に受けさせる必要があるのか」「期限はいつ切れるのか」「資格者証の更新と何が違うのか」「どの機関で受けられ、オンラインでも受けられるのか」「配置予定者の期限をどう管理するか」を、条文と国土交通省の資料で確認できた範囲で説明します。
誰が受講しなければならないか
まず、受講義務は監理技術者の全員にかかるわけではありません。建設業法第26条第5項は、「第3項の規定により専任の者でなければならない監理技術者」(同項各号の監理技術者を含む)を、資格者証の交付を受け、かつ登録講習を受講した人の中から選任するよう定めています。つまり、専任配置が必要な工事に置かれる監理技術者かどうかで、義務の有無が分かれます。
| 立場 | 講習受講の扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 専任が必要な工事に置く監理技術者 | 義務(資格者証の交付と講習修了の両方が選任の条件) | 建設業法第26条第5項 |
| 専任特例(第26条第3項ただし書の第1号・第2号)で置く監理技術者 | 義務(第5項の括弧書で対象に含まれる) | 建設業法第26条第5項 |
| 監理技術者補佐(専任特例2号で専任で置く補佐役) | 法律上の義務ではない。国交省のマニュアルは受講が「望ましい」としている | 監理技術者制度運用マニュアル 四(3)② |
| 専任を要しない工事の監理技術者 | 第26条第5項の選任要件の対象外 | 建設業法第26条第3項・第5項 |
専任特例とは、本来は専任が必要な工事で、条件を満たせば兼務を認める仕組みです。第1号は、請負代金の額や情報通信技術による現場確認などの要件を満たす場合です。第2号は、監理技術者の職務を補佐する「監理技術者補佐」を現場に専任で置く場合です。どちらの特例で置く監理技術者も、講習の義務は外れません。
どう判断するか:監理技術者の要否と専任の要否
講習が必要かどうかは、次の2段階で判断します。金額の基準は令和7年2月1日施行の政令改正で引き上げられており、以下の表は改正後の金額です。
- 監理技術者を置く工事か:発注者から直接請け負った特定建設業者が、その工事のために結ぶ下請契約の合計額が基準額以上なら、主任技術者に代えて監理技術者を置きます(法第26条第2項)。
- 専任が必要な工事か:公共性のある施設・工作物や、多数の人が利用する施設・工作物に関する重要な建設工事で、1件の請負代金が基準額以上なら、工事現場ごとに専任が必要です(法第26条第3項、施行令第27条第1項)。
- 1と2の両方に当てはまる(専任特例を使う場合も含む)監理技術者は、資格者証と講習修了の両方を備えている人から選任します(法第26条第5項)。
| 判断項目 | 基準額(令和7年2月1日以降) | 改正前 |
|---|---|---|
| 監理技術者の配置が必要になる下請契約の合計額 | 5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上) | 4,500万円(7,000万円) |
| 専任の監理技術者等が必要になる1件の請負代金の額 | 4,500万円以上(建築一式工事は9,000万円以上) | 4,000万円(8,000万円) |
「重要な建設工事」の範囲は広く取られています。国や地方公共団体が注文者の工事、道路・橋・上下水道などのインフラ工事、学校、病院、事務所、共同住宅、工場、倉庫などが施行令第27条第1項に挙げられています。一方、戸建て住宅は専任配置の対象外で、事務所や病院などを兼ねた併用住宅は、一定の面積と金額の条件を満たせば戸建て住宅と同じ扱いになります。結果として、監理技術者を置く工事の多くは専任の対象になり、講習が必要になると考えておくと管理を誤りにくくなります。
有効期間の数え方:「受講した年の翌年1月1日から5年」
令和3年1月1日以降、講習の有効期限の起算日は、受講した日の属する年の翌年1月1日です。期限はその日から5年後の12月31日です(建設業法施行規則第17条の17、監理技術者制度運用マニュアル)。同じ年なら、1月に受けても12月に受けても期限は変わりません。
| 受講日 | 起算日 | 有効期限 |
|---|---|---|
| 令和3年(2021年)中のいずれかの日 | 令和4年1月1日 | 令和8年(2026年)12月31日 |
| 令和8年(2026年)4月1日 | 令和9年1月1日 | 令和13年(2031年)12月31日 |
| 令和8年(2026年)11月中のいずれかの日 | 令和9年1月1日 | 令和13年(2031年)12月31日 |
| 令和9年(2027年)1月中のいずれかの日 | 令和10年1月1日 | 令和14年(2032年)12月31日 |
2行目は、全国建設研修センターのFAQに載っている例と同じです。とくに1行目に注意してください。令和3年に受講した人の修了履歴は、今年(2026年)12月31日で期限が切れます。来年1月以降も専任の監理技術者として配置する予定なら、年内に受講を終えていないと、1月1日から選任要件を欠くことになります。国交省のマニュアルも、選任されている期間中のどの日でも講習修了から5年を過ぎないよう受講しておく必要があるとしています。なお、令和2年以前に受講した修了履歴は、どちらの数え方でも既に5年を過ぎています。
初めて専任の監理技術者になる人について、全国建設研修センターは「選任される前日までに受講する必要がある」と案内しています。現場への配置が決まってから申し込むと間に合わないことがあるため、配置予定の段階で受講させるのが安全です。
監理技術者資格者証との関係
資格者証と講習の修了は、選任の条件としてはセットですが、制度としては別のものです。期限も手続先もそれぞれ異なります。
| 項目 | 監理技術者資格者証 | 監理技術者講習の修了履歴 |
|---|---|---|
| 根拠 | 建設業法第27条の18 | 建設業法第26条第5項、施行規則第17条の17 |
| 手続先 | 指定資格者証交付機関の一般財団法人建設業技術者センター | 国土交通大臣の登録を受けた講習実施機関 |
| 有効期間 | 5年。申請により更新(第27条の18第4項・第5項) | 受講年の翌年1月1日から5年後の12月31日まで |
| 証明の形 | 顔写真付きの資格者証 | 修了履歴のラベルを資格者証の裏面に貼る |
平成28年6月1日から、講習修了証は資格者証と1枚に統合されました。講習を修了すると修了履歴のラベルが交付され、それを資格者証の裏面に貼る方式です。資格者証の記載事項には「監理技術者講習を修了した場合はその旨」も含まれています。講習の受講と資格者証の交付申請は、どちらを先にしても構わないと全国建設研修センターは案内しています。
選任された監理技術者は、発注者から求められたら資格者証を提示しなければなりません(法第26条第6項)。マニュアルは、職務に従事している間は常に携帯している必要があるとしています。修了履歴も発注者等から提示を求められることがあるため、ラベルを貼り忘れたままにしないよう本人に伝えておきます。
資格者証の5年と講習の5年は起算点が違うため、通常は期限がずれます。「資格者証を更新したから講習も済んだ」という誤解は起きやすいので、台帳では別の欄に分けて管理します。
講習の実施機関とオンライン講習
講習を行えるのは、国土交通大臣の登録を受けた機関だけです。国土交通省の「監理技術者講習の実施機関一覧」(令和8年4月1日更新)には、次の6機関が載っています。
| 登録番号 | 機関の名称 | 初回登録日 |
|---|---|---|
| 1 | 一般財団法人全国建設研修センター | 平成16年6月30日 |
| 2 | 一般財団法人建設業振興基金 | 平成16年6月30日 |
| 5 | 一般社団法人全国土木施工管理技士会 | 平成16年7月30日 |
| 10 | 株式会社日建学院 | 平成23年1月13日 |
| 12 | 公益社団法人日本建築士会連合会 | 平成27年6月22日 |
| 13 | 株式会社総合資格学院法定講習センター | 令和8年4月1日 |
講習の内容はどの機関でも共通で、所要は1日、合計6時間です。科目は「建設工事に関する法律制度」(1.5時間)、「施工計画の作成、工程管理、品質管理その他の技術上の管理」(2.5時間)、「最新の材料、資機材及び施工方法」(2.0時間)の3つで、講義と試験で行われます。日程や会場、申込方法は機関ごとに違うため、国交省は各機関に問い合わせるよう案内しています。
オンライン講習は、少なくとも全国建設研修センターが会場講習とは別に設けています(2026年10月に同センターのFAQで確認)。同センターの案内では、受講期間は申込時に指定した受講開始日から60日間で、Webカメラが必要です。また、その年の最終受講日は一律12月27日とされ、修了できなかった分を翌年に続けることはできません。修了履歴は、すべての映像を見終わってから約1週間で届くとされています。他の機関がオンライン講習を行っているかや、その条件は、各機関で確認してください。
専任の監理技術者を受講のため現場から離す場合について、マニュアルは、研修や講習への参加など合理的な理由で短期間(1〜2日程度)現場を離れることを、適切な施工体制を確保できれば差し支えないとしています。
会社は配置予定者の期限をどう管理するか
選任要件を満たしているかを確認する責任は、選任する会社にあります。講習の期限切れは本人の手続ミスで済む話ではなく、会社が選任要件を満たさない監理技術者を置いた状態になります。全国建設研修センターも、継続して選任される人の修了履歴の期限が切れると建設業法違反になると注意を促しています。管理は次の3点でまとめると漏れが減ります。
| 管理項目 | 記録する内容 | 確認のタイミング |
|---|---|---|
| 資格者証 | 交付番号、有効期間の満了日、記載されている建設業の種類 | 配置を決めるとき・満了日が近づいたとき |
| 講習修了履歴 | 受講した年、有効期限(受講年+5年の12月31日)、ラベルを貼ったかどうか | 毎年の初め(その年の12月31日に切れる人を抽出) |
| 配置予定 | 工事名、専任の要否、選任予定の期間(工期の見込み) | 受注や入札参加の判断時・工期変更時 |
判断の手順は、次のように組むと実務に合わせやすくなります。
- 年の初めに、修了履歴の期限がその年の12月31日に来る人を一覧にします。今年なら令和3年に受講した人が該当します。
- その人が翌年1月1日以降も専任の監理技術者として配置される見込みがあるかを、工事部門に確認します。
- 見込みがあれば、年内に修了できる日程で申し込みます。オンライン講習は、機関ごとの申込期限と最終受講日(全国建設研修センターは、申込みが受講開始日の5日前まで、最終受講日が12月27日)、修了履歴が届くまでの日数を考えに入れます。
- 新しく専任の監理技術者にする予定の人は、選任の前日までに受講が終わるように手配し、資格者証の有効期間も同時に確認します。
- 修了後は、ラベルが資格者証の裏面に貼られたことを確認し、台帳の期限を更新します。
専任の監理技術者などを置く現場では、建設業の許可票の「資格者証交付番号」欄にその監理技術者の交付番号を記載します。台帳に交付番号を記録しておくと、標識の作成や発注者への提出書類を作るときにも使えます。監理技術者になれる資格そのものの取り方は、土木施工管理技士1級の取得方法の記事や造園施工管理技士1級の記事にまとめています。
よくある質問
Q. 期限が切れる前なら、5年を待たずに受け直してもよいですか。
受け直して構いません。有効期限は受講した年で決まり、その年の1月1日から12月31日のどの日に受けても、期限は5年後の12月31日になります。全国建設研修センターも、その年の業務の都合に合わせていつでも受講できると案内しています。ただし、期限が切れる年に受けずに翌年1月に受けると、1月1日から受講日までのあいだ選任要件を欠く期間ができます。
Q. 監理技術者補佐にも受講させる必要がありますか。
建設業法第26条第5項が対象にしているのは監理技術者で、補佐は含まれていません。国交省のマニュアルは、監理技術者を適切に補佐し資質を高める観点から、補佐も受講することが「望ましい」としています。法律上の義務ではなく推奨という位置づけです。
Q. 資格者証を更新すれば、講習の期限も延びますか。
延びません。資格者証の有効期間(5年、建設業技術者センターで更新)と講習の有効期限(受講年の翌年1月1日から5年)は、根拠も手続先も別です。講習の期限は、登録講習を受け直すことでしか更新されません。
Q. 講習を受けておくと経営事項審査で扱いが変わりますか。
全国建設研修センターのFAQでは、資格者証を持ち、講習も受けた1級の技術者は経営事項審査で加点評価の対象になると説明しています。令和4年8月15日の改正以降、加算できる期間は「講習修了の日の属する年の翌年から5年間」とされています。評価の詳細は、経営事項審査の審査機関の資料で確認してください。
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まとめ
- 講習の受講義務がかかるのは、専任で置く監理技術者(専任特例で置く場合を含む)です。資格者証の交付と講習の修了がそろって初めて選任できます(建設業法第26条第5項)。
- 令和7年2月1日以降、監理技術者が必要になる下請合計額は5,000万円以上(建築一式8,000万円以上)、専任が必要になる請負代金は4,500万円以上(建築一式9,000万円以上)です。
- 講習の有効期限は、受講した年の翌年1月1日から5年後の12月31日です。令和3年に受講した人は2026年12月31日で期限が切れます。
- 資格者証(5年ごとに更新)と講習の修了履歴は別々に期限を管理します。修了履歴のラベルは資格者証の裏面に貼ります。
- 講習は国土交通大臣の登録を受けた6機関(令和8年4月1日時点)が実施しています。オンライン講習の有無や締切は機関ごとに確認し、年内に修了できるよう逆算して申し込みます。
出典
- 建設業法 第26条第2項・第3項・第5項・第6項、第27条の18、第27条の19
- 建設業法施行令 第2条、第27条第1項(令和7年2月1日施行の改正後)
- 建設業法施行規則 第17条の17(監理技術者制度運用マニュアルでの引用による)
- 国土交通省「監理技術者制度運用マニュアルについて」(最終改正 令和7年1月28日 国不建技第147号)
- 国土交通省 報道発表資料「建設業の各種金額要件や技術検定の受検手数料を見直します」(令和6年12月6日)
- 国土交通省「監理技術者講習の実施機関一覧」(令和8年4月1日更新)
- 一般財団法人全国建設研修センター「監理技術者講習 よくある質問」「監理技術者講習の有効期間が変更」
制度は改正されます。業種・事業場の規模・作業内容によって扱いが変わるため、実際の適用は所轄の労働基準監督署・都道府県労働局・消防署・講習の実施機関で必ずご確認ください。

