自衛消防組織は、消防法第8条の2の5に基づいて、大規模な建物に置くことが義務づけられている組織です。対象になる建物は防災管理対象物と同じ範囲です。組織のトップである統括管理者と、本部隊の4つの班を率いる班長(告示班長)には、原則として自衛消防業務講習の修了が必要です。修了後は「修了した日以後の最初の4月1日から5年以内ごと」に再講習を受けます。
この記事は、ビルの所有者側とテナント側の総務・人事・安全衛生の担当者向けです。「自社の建物は対象か」「誰にどの講習を受けさせるか」「防火管理者・防災管理者とどう分担するか」「消防署に何を出すか」で迷ったときに使えるよう、条文と、消防庁・東京消防庁の公表資料で確認できた内容だけをまとめました。
自衛消防組織が必要な建物かを判断する
判断に使うのは、消防法施行令第4条の2の4です。もともと防火管理が必要な建物(消防法第8条の対象)のうち、用途と規模が下の表に当てはまるものが対象です。この範囲は、防災管理者を選任しなければならない「防災管理対象物」と同じです。
| 建物の種類 | 階数の条件(地階を除く) | 面積の条件 |
|---|---|---|
| 対象用途の建物(令別表第一の(1)項〜(4)項、(5)項イ、(6)項〜(12)項、(13)項イ、(15)項、(17)項) | 11階以上 | 延べ面積1万㎡以上 |
| 5階以上10階以下 | 延べ面積2万㎡以上 | |
| 4階以下 | 延べ面積5万㎡以上 | |
| 複合用途の建物((16)項)で、上の対象用途を含むもの | 対象用途の部分が11階以上の階にある | 対象用途の床面積の合計が1万㎡以上 |
| 対象用途の部分が5階以上10階以下の階にある | 対象用途の床面積の合計が2万㎡以上 | |
| 対象用途の部分が4階以下の階にある | 対象用途の床面積の合計が5万㎡以上 | |
| 地下街((16の2)項) | - | 延べ面積1,000㎡以上 |
共同住宅、倉庫、格納庫は対象用途に含まれません。判断するときは、次の2点に注意してください。
- 建物全体で判断します。自社が借りている区画の広さや自社の人数ではなく、防火対象物全体の階数と面積で決まります。
- 同じ敷地内にあり、管理権原者が同じ建物が複数ある場合は、まとめて1つの建物として判断します。
「管理権原者」とは、建物や区画の管理について権限を持つ人のことです。建物の所有者のほか、テナントの管理権原者も含まれます。東京消防庁は、該当するかどうかを確認できる判定チェッカーを公開しています。
組織の中身:統括管理者・告示班長・自衛消防要員
自衛消防組織は、組織全体をまとめる統括管理者と、実際に活動する自衛消防要員で構成します。次の4つの業務それぞれに、自衛消防要員をおおむね2人以上置く必要があります。
| 業務 | 班の呼び方の例 |
|---|---|
| 火災の初期段階での消火活動 | 初期消火班 |
| 情報の収集・伝達、消防用設備などの監視 | 通報連絡(情報)班 |
| 在館者が避難するときの誘導 | 避難誘導班 |
| 在館者の救出・救護 | 応急救護班 |
統括管理者のすぐ下に置く部隊を「本部隊」と呼び、必要に応じて「地区隊」も編成します。本部隊のうち、上の4つの業務を受け持つ班の班長を告示班長といいます。告示班長は資格管理の対象になるので、名簿で管理する際は一般の班員と分けておくと、異動のときに確認しやすくなります。
統括管理者・告示班長になれる人
統括管理者の資格は、消防法施行令第4条の2の8と消防法施行規則第4条の2の13で定められています。主なルートは次の3つです。
| 資格のルート | 内容 | 再講習 |
|---|---|---|
| 自衛消防業務講習の修了者(令第4条の2の8第3項第1号) | 都道府県知事、消防本部・消防署を置く市町村の消防長、または総務大臣の登録を受けた法人が行う講習を修了した人 | 必要 |
| 必要な学識経験等がある人(規則第4条の2の13第1号・第2号) | 例:消防団員として、班長以上の管理的・監督的な職に3年以上就いていた人など | 不要 |
| 上の人に準ずる人(規則第4条の2の13第3号、平成20年消防庁告示第14号) | 以前の防災センター要員講習の修了者で、最後にその講習を受けた日から5年以内に、自衛消防組織の業務に関する追加講習を修了した人。追加講習の本講習は3科目3時間で、そのあと30分の効果測定(理解度の確認テスト)があります | 本講習から5年以内に、自衛消防業務再講習が必要 |
告示班長については、平成20年消防庁告示第13号で、教育は自衛消防業務講習を受けさせることで行うと定められています。ただし、規則第4条の2の13の各号に当たる人(上の表の2段目・3段目の人)が班長の場合は、防火管理者(防災管理者)が消防計画で定めるところにより教育を行います。東京消防庁の指導基準でも、告示班長は自衛消防業務講習修了者等とすることとされています。
資格のほかに、立場も問われます。東京消防庁の指導基準では、統括管理者は建物での自衛消防活動全般について権限を行使できる人とされています。具体的には、統括防災管理者、統括防火管理者、防火管理者、防災センターの長など、管理的・監督的な立場の人を充てるよう求めています。講習を受けさせる人を決めるときは、資格と社内での権限の両方を確認してください。
自衛消防業務講習の内容と再講習の期限
自衛消防業務講習には、初めて受ける人向けの新規講習と、修了者が定期的に受ける再講習があります(規則第4条の2の14)。
| 区分 | 講習時間 | 科目(消防庁のガイドラインによる配分) | 効果測定 |
|---|---|---|---|
| 新規講習 | おおむね12時間(規則第4条の2の14第2項) | 防火管理・防災管理の意義と制度(3時間)、自衛消防組織と統括管理者・要員の役割と責任(3時間)、防災設備などの知識(1時間)、防災設備などの取扱いと災害対応の総合訓練(5時間) | 1時間 |
| 再講習 | おおむね4時間(規則第4条の2の14第3項) | 防火管理・防災管理・消防用設備などの制度改正の概要(1時間)、災害事例研究(1時間)、災害時対応の総合訓練(2時間) | 1時間 |
修了すると、規則第4条の2の14第4項に定める様式(別記様式第1号の2の2の3の2)の修了証が交付されます。消防署に出す届出には統括管理者の資格を証する書面を付けるため、修了証の写しは会社でも保管しておいてください。
再講習の期限は、東京消防庁の案内では「講習を修了した日以後における最初の4月1日から5年以内ごと」です(平成20年消防庁告示第15号。平成23年消防庁告示第8号で改正され、平成24年4月1日に施行)。たとえば2026年10月に新規講習を修了した場合、起算日は2027年4月1日になります。再講習を修了したら、その後の最初の4月1日がまた次の起算日になります。資格管理の台帳には、修了日と次の起算日の両方を書いておくと期限を見落としにくくなります。
東京消防庁の管内では、防災センター要員講習と自衛消防業務講習を同じカリキュラムで行っており、修了すると両方の修了証が交付されます。新規は防災センター技術講習(2日間)と合わせて、再講習は1日で行われ、窓口は一般社団法人東京防災設備保守協会です。ほかの地域では実施機関や日程が違うので、管轄の消防本部か実施機関に確認してください。
防火管理者・防災管理者との関係と、設置から届出までの流れ
自衛消防組織が必要な建物は、防災管理対象物でもあります。そのため、統括管理者の選任とは別に、防災管理者の選任も必要です。名前が似ているので、役割を並べて整理します。
| 役割 | 主な仕事 | 必要な資格の例 | 再講習 |
|---|---|---|---|
| 防火管理者 | 防火の消防計画の作成、消火・通報・避難訓練など | 防火管理講習の修了など | 建物の区分による |
| 防災管理者 | 地震などに備えた防災管理の消防計画の作成、避難訓練(年1回以上)など。防火管理者の業務も合わせて行います | 甲種防火管理講習と防災管理新規講習の修了など | 5年以内ごとに防災管理再講習 |
| 統括管理者 | 災害が起きたときに自衛消防組織を指揮する | 自衛消防業務講習の修了など | 最初の4月1日から5年以内ごとに自衛消防業務再講習 |
防災管理対象物では、防災管理者が防火管理者の業務も行うので、防災管理者と防火管理者を別の人にすることはできません。一方、統括管理者は資格の体系が別です。防火管理者や防災管理者を統括管理者にする場合も、自衛消防業務講習の修了などの資格がなければなりません。防災管理者の講習の選び方は「防災管理者が必要な建物か|防火管理者との違い、講習と再講習の選び方」で詳しく説明しています。
東京消防庁が示している手順をもとに、担当者が進める順番を並べると次のようになります。
- 防災管理者になる予定の人に防災管理新規講習を受けさせ、防災管理者を選任して届け出ます(新規講習を受けるには、甲種防火管理講習を修了していることが前提です)。
- 統括管理者になる予定の人に自衛消防業務講習を受けさせます。
- 管理権原者が自衛消防組織を編成し、遅滞なく「自衛消防組織設置(変更)届出書」を管轄の消防署長に出します。
- 防火・防災それぞれの消防計画に、自衛消防組織の活動要領、要員の教育と訓練などを書き加えて届け出ます。2つの計画を1つにまとめてもかまいませんが、届出はそれぞれ必要です。
- 告示班長に講習を受けさせるなど、消防計画に沿って教育を行います。
- 地震などを想定した避難訓練を年1回以上行い、防災管理点検資格者による点検を年1回受けて、結果を消防署に報告します。
東京消防庁の案内では、届出書に次の書類を添付します:統括管理者の資格を証する書面、防火対象物自衛消防隊の編成表と任務表、資格管理表、営業時間外の編成表。管理権原者が複数いる場合は、これに加えて事業所ごとの編成表・資格管理表と、自衛消防協議会の構成員一覧表が必要です。組織の内容を変えたときも、遅滞なく変更の届出が必要です。統括管理者や告示班長が異動したら、変更の届出が要るかどうかを確認してください。
ビルのテナント企業がやること
大規模なビルに入居している場合、「自衛消防組織はビルのオーナーや管理会社が作るもの」と考えがちです。しかし東京消防庁は、1つの建物に複数の事業所が入っている場合は各事業所の管理権原者にも設置の義務があるとしています。この場合は、管理権原者が共同して、建物全体で1つの自衛消防組織を置きます(令第4条の2の5第2項)。テナント側の担当者が確認することを、時期ごとに整理しました。
| 時期 | テナントが確認・対応すること |
|---|---|
| 入居前・入居時 | 建物が防災管理対象物かどうか(建物全体で判断)。共同で置く自衛消防組織の協議会に参加すること、自社の担当範囲と出す要員の人数 |
| 選任のとき | 自社の防火管理者を防災管理者と同じ人にすること。乙種防火管理者として選任されている人が防災管理者になるには、甲種防火管理新規講習と防災管理新規講習の両方の修了が必要です |
| 組織を作るとき | 統括管理者や告示班長を自社から出す場合は、講習の受講を計画すること。事業所自衛消防隊の編成表・資格管理表を作ること(東京消防庁の添付書類の例) |
| 届出のとき | 設置の届出はすべての管理権原者の義務ですが、連名や代表者による届出もできます。誰の名前で出すかを協議会で決めておきます |
| 毎年・異動のとき | 避難訓練への参加、防災管理点検への対応、要員や班長が変わったときの協議会への連絡、再講習の期限の管理 |
管理権原が分かれている防災管理対象物では、建物全体の防災管理を進めるため、管理権原者どうしで協議して統括防災管理者を選任します。統括防災管理者にも、防災管理者と同じ資格が必要です。テナント企業はこの協議に加わることになるため、自社の防火・防災管理者と、自衛消防組織での自社の役割をあわせて把握しておくと、協議会での調整が進めやすくなります。社内で選任義務がある資格をまとめて把握したいときは「選任義務がある資格の一覧」も参考にしてください。
よくある質問
Q. 東京の「自衛消防技術認定証」と自衛消防業務講習は同じものですか。
別の制度です。自衛消防業務講習は、消防法に基づいて統括管理者と告示班長に求められる講習です。自衛消防技術認定証は、東京消防庁管内で「自衛消防活動中核要員」になるために必要な資格で、自衛消防技術試験に合格すると交付されます。東京の建物では両方が求められることがあるので、名簿では別々に管理してください。
Q. 自衛消防業務講習はオンラインで受けられますか。
消防庁が令和4年8月29日に出した通知(消防予第428号)の「防火・防災管理に関する講習のガイドライン」では、自衛消防業務新規講習と再講習は実技を伴うため、講習の全課程を自宅などで受ける「オンライン型」の対象外とされています。講義をオンラインで受け、実技と効果測定を会場で受ける「ハイブリッド型」は想定されていますが、その場合も実技と効果測定は会場で受けることになります。会場に行く日があることを前提に、日程を組んでください。実施方法は講習機関ごとに確認してください。
Q. 防災センター要員講習の修了者は、新規講習を受け直す必要がありますか。
防災センター要員講習の修了者は、最後にその講習を受けた日から5年以内に追加講習を修了すると、自衛消防業務講習の修了者と同等の資格を得られます(規則第4条の2の13第3号、平成20年消防庁告示第14号)。そのあとは、自衛消防業務再講習を受け続ける必要があります。
Q. 統括管理者は防火管理者と同じ人でもよいですか。
東京消防庁の指導基準では、統括管理者に充てる人の例として、統括防災管理者、統括防火管理者、防火管理者、防災センターの長などが挙がっています。同じ人が兼ねる場合でも、統括管理者としての資格(自衛消防業務講習の修了など)は別に必要です。
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まとめ
- 自衛消防組織が必要な建物は防災管理対象物と同じ範囲で、テナントの規模ではなく、建物全体の用途・階数・面積で判断します。
- 統括管理者には自衛消防業務講習の修了などの資格が必要です。告示班長も、規則第4条の2の13の各号に当たる人を除いて、この講習を受けて教育を受けます。
- 新規講習はおおむね12時間、再講習はおおむね4時間で、それぞれ1時間の効果測定があります。再講習は修了日以後の最初の4月1日から5年以内ごとに受けます。
- 防災管理対象物では、防災管理者と防火管理者は同じ人でなければなりません。統括管理者はそれとは別の資格体系です。
- テナントにも設置の義務があり、共同で1つの組織を置きます。協議会への参加、要員の提供、届出の方法、異動時の連絡を決めておく必要があります。
出典
- 消防法 第8条、第8条の2の5、第36条
- 消防法施行令 第4条の2の4、第4条の2の5第2項、第4条の2の8
- 消防法施行規則 第4条の2の10第4項、第4条の2の11、第4条の2の13、第4条の2の14
- 平成20年消防庁告示第13号・第14号・第15号・第16号(消防庁予防課長通知 消防予第238号 平成20年9月24日に収録)
- 消防庁予防課長通知 消防予第231号(平成23年6月17日。平成23年消防庁告示第8号による自衛消防業務再講習の受講期限の改正)
- 消防庁予防課長通知「防火・防災管理に関する講習のオンライン化について」(消防予第428号 令和4年8月29日)
- 消防庁「防火管理制度等の概要」(平成30年6月20日 参考資料1-4)
- 東京消防庁「平成21年6月1日施行 自衛消防組織の設置」
- 東京消防庁「大規模地震等に対応した自衛消防力の確保に係る消防法令の改正」
- 東京消防庁「防災センター要員講習・自衛消防業務講習とは」
- 東京消防庁「自衛消防組織・自衛消防活動中核要員について」
- 東京消防庁「自衛消防隊の組織編成基準」
制度は改正されます。業種・事業場の規模・作業内容によって扱いが変わるため、実際の適用は所轄の労働基準監督署・都道府県労働局・消防署・講習の実施機関で必ずご確認ください。

