はい作業主任者の選任|2m以上の判断基準、受講資格・講習12時間、何人置くか

技能講習

倉庫・上屋・土場に積んだ荷の高さが2m以上になり、その荷を積む(はい付け)または崩す(はい崩し)作業をする場合、事業者は「はい作業主任者技能講習」を修了した人の中から、はい作業主任者を選任しなければなりません。ただし、フォークリフトなど荷役機械の運転者だけで行う作業は対象外です。何人置くかは労働者数では決まりません。作業がある直(シフト)ごとに選任が必要で、離れた場所で同時に作業する場合は、1人の主任者が直接指揮できる範囲かどうかも考えます。

この記事は、社員の資格や選任を管理する総務・人事・安全衛生の担当者向けです。「うちの倉庫で選任は必要か」「誰を講習に出せばよいか」「交替制や棟が複数ある場合は何人必要か」の3点を、条文と労働局の資料に沿って整理します。

選任が必要な作業か:4つの要件で判断する

選任義務の根拠は、労働安全衛生法第14条と同法施行令第6条第12号です。施行令が定めている作業は「高さが2メートル以上のはい(倉庫、上屋又は土場に積み重ねられた荷(小麦、大豆、鉱石等のばら物の荷を除く。)の集団をいう。)のはい付け又ははい崩しの作業(荷役機械の運転者のみによつて行われるものを除く。)」です。これを受けて労働安全衛生規則(以下「安衛則」)第428条が、この作業には技能講習修了者からはい作業主任者を選任するよう定めています。

現場では、次の4点を順に確認します。

確認すること 条文上の要件 現場での見方(労働局資料による)
1. 荷の種類 倉庫、上屋又は土場に積み重ねられた荷の集団。小麦、大豆、鉱石などのばら物の荷は除く 袋物、箱物、木材などの集団が「はい」にあたる。木材や鋼材も、積めばはいになる
2. 高さ 2m以上 作業床から荷の最上部までの高さで測る
3. 作業の内容 はい付け又ははい崩し はいの上で結束を外す作業や、はいの上の荷をばらす作業もはい作業になる。はいの上での検数(数量確認)や点検も含まれる
4. 除外 荷役機械の運転者のみによって行われる作業 除外されるのは、運転者以外の人が立ち入らない作業だけ

4つすべてに当てはまれば選任が必要です。迷いやすいのは3と4です。積む・崩す作業そのものはフォークリフトで行っていても、人がはいの上に上がって結束を外したり数を数えたりすれば、選任が必要になります。

フォークリフトだけで積めば不要か:除外の条件と運転資格

パレットで荷を扱う物流倉庫では、「フォークリフトで積んでいるので、はい作業主任者はいらない」と考えられがちです。しかし除外されるのは「運転者のみ」で行う作業に限られます。福井労働局の資料でも、除外されるのは人が立ち入らない作業だけだと説明されています。

また、主任者が要らない場合でも、運転者本人の資格は別に必要です。フォークリフトの運転資格は、施行令と安衛則で最大荷重によって分かれています。

現場の状況 はい作業主任者 運転者に必要なもの
最大荷重1t以上のフォークリフトで、運転者だけで2m以上に段積みする 不要(運転者のみの作業) フォークリフト運転技能講習の修了など(施行令第20条第11号、安衛則別表第3)
最大荷重1t未満のフォークリフトで、運転者だけで段積みする 不要(運転者のみの作業) 特別教育(安衛則第36条第5号)
フォークリフトで積み、別の作業者がはいの上で結束外し・検数・点検をする 必要 上の運転資格に加えて、はい作業主任者の選任
人の手で段ボールや袋物を2m以上に積む、または崩す 必要 —

誰を選任できるか:技能講習の受講資格と講習時間

はい作業主任者になれるのは、はい作業主任者技能講習の修了者だけです(安衛則第428条)。技能講習は登録教習機関が行い、修了者には技能講習修了証が交付されます。

項目 内容 根拠
受講資格 はい付け又ははい崩しの作業に3年以上従事した経験を有する者 安衛則第79条・別表第6
講習科目と時間 はいに関する知識 3時間/人力によるはい付け又ははい崩しの作業に関する知識 5時間/機械等によるはい付け又ははい崩しに必要な機械荷役に関する知識 3時間/関係法令 1時間(学科のみ、計12時間) はい作業主任者技能講習規程第2条
修了試験 講習科目について筆記試験で行う 同規程第3条
申込み 技能講習受講申込書(様式第15号)を、講習を行う登録教習機関に提出する 安衛則第80条
修了証 登録教習機関が、修了者に技能講習修了証(様式第17号)を遅滞なく交付する 安衛則第81条

受講資格は「3年以上の実務経験」の1つだけです。ほかの作業主任者講習には、学歴によって必要年数が短くなる区分や「その他厚生労働大臣が定める者」の区分がありますが、東京労働局の受講資格一覧を見ると、はい作業主任者にはどちらもありません。そのため、入社して間もない社員や他部署から異動してきた社員は、まだ受講できない場合があります。講習に出す人を選ぶ段階で、はい付け・はい崩しの経験年数を確認しておく必要があります。受講料や日程は機関ごとに違うため、この記事では扱いません。

選任した主任者に何をさせるか:5つの職務と事業者の措置

選任するだけでは足りません。安衛則第429条は、事業者がはい作業主任者に次の事項を「行なわせなければならない」と定めています。

  1. 作業の方法及び順序を決定し、作業を直接指揮すること
  2. 器具及び工具を点検し、不良品を取り除くこと
  3. 作業箇所を通行する労働者を安全に通行させるため、必要な事項を指示すること
  4. はい崩しを行うときは、はいの崩壊の危険がないことを確認してから、作業の着手を指示すること
  5. 昇降設備(第427条第1項)と保護帽の使用状況を監視すること

主任者が監視する設備や保護具を用意するのは事業者です。安衛則の「はい付け、はいくずし等」の款では、次の措置も事業者の義務とされています。条によって高さの基準が違う点に注意してください。

条 対象 事業者がすること
第427条 はいの上の作業箇所が床面から1.5mを超えるとき 安全に昇降するための設備を設ける(はいを構成する荷で安全に昇降できる場合を除く)
第430条 床面から2m以上で、袋・かます・俵の荷のはい 隣のはいとの間隔を、はいの下端で10cm以上にする
第431条 床面から2m以上のはいのはい崩し 中抜きをさせない。袋・かます・俵の荷はひな段状に崩させ、各段(最下段を除く)の高さを1.5m以下にさせる
第432条 はいの崩壊・荷の落下のおそれがあるとき ロープで縛る、網を張る、くい止め、はい替えなどの措置
第433条 はい作業の箇所で崩壊・落下の危険があるところ 関係する作業従事者以外の者の立入りを、見やすい箇所への表示などで禁止する
第434条 はい付け・はい崩しの作業場所 安全に作業するために必要な照度を保つ
第435条 はいの上の作業で、作業箇所が床面から2m以上 保護帽を着用させる

倉庫・物流・製造の現場で何人置くか:直ごと・指揮が届く範囲ごと

はい作業主任者には「労働者何人につき1人」という基準はありません。選任義務は作業に対してかかるため、必要な人数は「はい作業がいつ、どこで行われるか」で決まります。作業主任者全般に共通する選任と掲示のルールは作業主任者の選任と氏名の掲示で詳しく扱っています。ここでは、はい作業に当てはめた場合だけを整理します。

現場の状況 配置の考え方 根拠・注記
日勤のみ。1つの保管エリアで手積み・手崩しをする 修了者から選任し、氏名と行わせる事項を掲示する 安衛則第18条。掲示のほか、腕章や特別の帽子を着用させる方法も含まれるとされている
2交替・3交替で、夜間もはい作業がある 直ごとに選任する 職場のあんぜんサイトの解説では、ボイラー取扱いなど一部を除き、作業主任者は労働者を直接指揮する必要があるので各直ごとに選任するとされている。はい作業主任者はこの例外に入っていない
同じ場所で2人以上を選任する それぞれの職務の分担を定める 安衛則第17条
離れた複数の棟・置場で同時にはい作業をする 1人で直接指揮できる範囲かどうかで判断する 職務の1番目が「作業を直接指揮すること」(第429条)であることに基づく解釈。判断に迷う場合は所轄の労働基準監督署に確認する
製造業の資材置場で、木材や鋼材を2m以上に積む・崩す 倉庫と同じく選任の対象になる 木材や鋼材もはいにあたる(福井労働局資料)

総務・人事として修了者を管理する場合は、まず拠点ごとに「はい作業がある直の数」と「同時に作業する場所の数」を数えます。そのうえで、休暇や欠勤の日にも直接指揮できる人が残るよう、修了者を何人確保するかを決めます。この余裕分は法令で決まった人数ではなく、運用上の備えです。主任者が不在の日は作業を止めるのか、ほかの修了者を選任して掲示し直すのか、どちらかを決めておかないと現場に空白が生まれます。

2025年・2026年の改正で確認しておくこと

はい作業主任者の選任要件(2m以上、技能講習修了者からの選任)は、2025年・2026年の改正の対象になっていません。現行の安衛則第428条にも改正の注記はありません。ただし、関連する分野では担当者が押さえておきたい変更が3つあります。

時期 内容 実務への影響
2025年4月から 危険箇所への立入禁止などの措置の対象が、労働者以外の人(一人親方、他社の労働者、資材搬入業者、警備員など)にも広がった 倉庫に出入りする他社のドライバーや協力会社の作業者も含めて、立入禁止の表示などが届いているかを見直す
2026年1月1日施行 技能講習の不正防止対策の強化。技能講習修了証の不正交付の禁止、回収命令、命令に従わない登録教習機関の登録取消し・業務停止など 不正に交付された修了証は回収命令の対象になる。社員を講習に出す前に、登録教習機関かどうかを確認する
2026年3月16日から 技能講習修了証明書(統合カード)の発行申請が、マイナポータルからもできるようになった 修了証を紛失したときや氏名が変わったときの手続の選択肢が増えた

よくある質問

Q. はいの高さが2m未満なら、何もしなくてよいですか。

はい作業主任者の選任義務はかかりません。ただし、はいの上の作業箇所が床面から1.5mを超える場合は昇降設備が必要です(第427条)。また、崩壊防止(第432条)、立入禁止(第433条)、照度(第434条)の各条には高さの要件がないため、2m未満でも適用されます。

Q. 選任した主任者が休みの日に、はい作業をしてもよいですか。

主任者の職務は作業の直接指揮であり、交替制では直ごとの選任が求められています。この趣旨から考えると、主任者がいない時間に2m以上のはい作業を行う場合は、その時間に指揮する別の修了者を選任し、掲示も切り替えることになります。修了者がいない場合は、その作業を行わない運用にします。

Q. 社員が技能講習修了証をなくしました。どうすればよいですか。

修了証を交付した登録教習機関に技能講習修了証再交付申込書(様式第18号)を提出し、再交付を受けます(安衛則第82条)。交付した機関が業務をやめている場合などは、厚生労働大臣が指定する機関に、修了を証する書面の交付を申し込みます。技能講習修了証明書発行事務局が発行する統合カードは、修了証と同じく資格を証する書面として扱われます。ただし、登録教習機関から情報が提供されていない講習の分は発行できないとされています。

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まとめ

  • 倉庫・上屋・土場の荷(ばら物を除く)で、作業床から最上部まで2m以上のはいをはい付け・はい崩しするときは、技能講習修了者からはい作業主任者を選任する義務がある(施行令第6条第12号、安衛則第428条)。
  • 除外されるのは、フォークリフトなどの運転者だけで行う作業に限られる。人がはいの上に上がって結束外しや検数をするなら選任が必要。
  • 受講資格は、はい付け・はい崩しの経験3年以上。講習は学科12時間で、筆記の修了試験がある。
  • 主任者には、作業方法・順序の決定と直接指揮など5つの職務を行わせ、氏名と行わせる事項を掲示などで周知する。2人以上を選任したら職務の分担を定める。
  • 人数は労働者数では決まらない。直ごとに選任し、同時に作業する場所の数と不在時の代わりも考えて修了者を確保する。

出典

  • 労働安全衛生法 第14条
  • 労働安全衛生法施行令 第6条第12号、第20条第11号
  • 労働安全衛生規則 第16条、第17条、第18条、第36条第5号、第79条〜第83条、第427条〜第435条、別表第3、別表第6
  • はい作業主任者技能講習規程(昭和47年労働省告示第106号)第2条、第3条
  • 東京労働局「各種技能講習の受講資格」
  • 福井労働局「はい作業主任者を選任していますか」
  • 新潟労働局 長岡労働基準監督署「はい作業による労働災害を防止しましょう」
  • 厚生労働省 職場のあんぜんサイト「安全衛生キーワード:作業主任者」
  • 厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「2025年4月から事業者が行う退避や立入禁止等の措置について、以下の1、2を対象とする保護措置が義務付けられます」
  • 京都労働局「労働安全衛生法・作業環境測定法 等改正の主なポイントについて」
  • 技能講習修了証明書発行事務局「技能講習修了証明書発行のご案内」

制度は改正されます。業種・事業場の規模・作業内容によって扱いが変わるため、実際の適用は所轄の労働基準監督署・都道府県労働局・消防署・講習の実施機関で必ずご確認ください。

【資格・講習 合格ナビ 編集部 監修】技能講習・国家資格の専門メディア編集部が監修。合格率・取得費用・勉強法に関する情報を提供しています。
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