2024年4月から、化学物質を扱う事業場では業種や規模に関係なく「化学物質管理者」の選任が義務になりました。保護具を使わせている場合は、「保護具着用管理責任者」も必要です。
塗料・洗浄剤・接着剤・溶剤などを使っているだけの事業場も対象になり得ます。この記事では、自社が対象かどうか、誰を選び、講習が必要かを整理します。
対象になるのはどんな事業場か
判定の出発点は、「リスクアセスメント対象物」を扱っているかです。これは、ラベル表示やSDS(安全データシート)の交付が義務づけられている化学物質のことで、2024年以降も段階的に追加されています。
| 事業場の状況 | 化学物質管理者 |
|---|---|
| リスクアセスメント対象物を製造している | 選任が必要(専門的講習の修了者などから) |
| 製造はしていないが、取り扱っている(使っている) | 選任が必要(資格要件はなし) |
| 取り扱わないが、譲渡・提供している(ラベル・SDSを作る) | 選任が必要(資格要件はなし) |
| いずれにも当たらない | 不要 |
購入した製品のSDSを見て、成分に対象物質が入っていれば「取り扱っている」に当たります。まずSDSを集めて成分を確認することが、判定の最初の作業です。
選任のルール
- 事業場ごとに選任する(会社に1人ではない)
- 選任すべき事由が生じた日から14日以内に選任する
- 選任した人の氏名を事業場の見やすい場所に掲示するなどして、働く人に知らせる
労働基準監督署への選任報告は求められていません。その分、社内に記録を残しておかないと、選任したことを示せません。
講習が必要かどうか
製造している事業場
厚生労働大臣が定める専門的講習(学科と実習でおおむね12時間)を修了した人などから選任します。講習の日程は限られるので、対象になると分かった時点で申し込み先を探してください。
取り扱うだけの事業場
資格要件はありません。ただし国の通達では、一定の講習(おおむね6時間程度)を受けることが望ましいとされています。何も知らない人を名前だけ選任しても、次に挙げる職務は果たせません。
化学物質管理者がやること
- ラベル表示・SDSの確認と管理
- リスクアセスメントの実施の管理(使う物質・作業が変わったときにも行う)
- リスクアセスメントの結果にもとづく、ばく露を減らす措置の管理
- 労働災害が起きたときの対応
- 記録の作成と保存
- 働く人への周知と教育
保護具着用管理責任者 ─ 保護具を使わせるなら必要
リスクアセスメントの結果、防毒マスク・化学防護手袋などの保護具を働く人に使わせる場合は、保護具着用管理責任者を選任します。こちらも事業場ごと、14日以内です。
選べるのは、次のような人です。
- 第一種衛生管理者・衛生工学衛生管理者の資格を持つ人
- 特定化学物質・有機溶剤などの作業主任者の資格を持つ人
- 労働衛生コンサルタントなどの専門家
- 上に当たらない場合は、保護具の管理に関する教育(おおむね6時間程度)を受けた人
社内に作業主任者がいれば、その人を選任するのがいちばん早い方法です。職務は、保護具の選び方・使い方・保守の管理と、フィットテストなど正しく着けられているかの確認です。
2つを同じ人が兼ねてもよいか
兼務は可能とされています。小さな事業場では1人で兼ねる形が現実的です。ただし、作業場が複数ある・扱う物質が多い事業場では、管理が形だけになりやすいので分けることを検討してください。
担当者がやること ─ 台帳で管理する
- 事業場ごとの対象判定の結果(製造/取扱い/譲渡提供)と根拠にしたSDS
- 化学物質管理者・保護具着用管理責任者の氏名・選任日・掲示した日
- 修了した講習・教育の名前と修了日
- 後任候補
異動や退職で14日以内に後任を選任しなければなりません。後任候補に前もって講習を受けさせておくと慌てずに済みます。
よくある質問
対象物質が少し入った洗剤を使うだけでも対象ですか
含有量が一定の基準(裾切り値)未満の製品は、表示・通知の対象から外れることがあります。自分で含有量を判断せず、SDSの成分欄に対象物質として記載があるかを確認してください。記載があれば「取り扱っている」に当たります。
本社で1人選べば、工場や営業所もカバーできますか
できません。事業場ごとの選任です。複数の拠点で対象物を扱っているなら、それぞれに選任します。
罰則はありますか
選任は労働安全衛生規則にもとづく義務で、違反すれば是正の指導の対象になります。労働災害が起きたときには、選任していなかったこと自体が管理体制の不備として問われます。
💡 社員の資格・講習を管理している方へ。有効期限が自動で色分けされる管理台帳テンプレート(Excel)を無料で配布しています。
まとめ
- リスクアセスメント対象物を製造・取扱い・譲渡提供する事業場は、業種・規模を問わず化学物質管理者が必要
- 事業場ごと・14日以内に選任し、氏名を掲示などで知らせる。届出はないので記録を残す
- 製造する事業場は専門的講習の修了者から。取り扱うだけなら要件はないが講習の受講が望ましい
- 保護具を使わせるなら保護具着用管理責任者も必要。作業主任者の有資格者を充てると早い
- まずSDSを集めて成分を確認することが判定の出発点
出典
- 労働安全衛生規則第12条の5(化学物質管理者)・第12条の6(保護具着用管理責任者)
- 労働安全衛生法第57条・第57条の2・第57条の3(表示・通知・リスクアセスメント)
- 厚生労働省「労働安全衛生法の新たな化学物質規制」(2024年4月1日施行分)
対象・周期・人数は、建物の用途や規模、業種・作業内容で変わります。実際の適用は、所轄の消防本部・労働基準監督署・講習の実施機関で必ずご確認ください。

