社員に講習を受けさせる費用に、国の「人材開発支援助成金」が使える場合があります。ただし、法律で会社に実施が義務付けられている講習(法定の特別教育など)は対象外です。「資格の講習ならどれでも出る」と考えて計画すると外れます。
この記事は、社員の資格取得や講習の費用を管理する担当者に向けて、人材開発支援助成金の中でも使う場面が多い「人材育成支援コース」の要件を、厚生労働省の令和8年度版パンフレット(令和8年8月3日版)に沿って整理したものです。
人材育成支援コース(人材育成訓練)の主な要件
| 項目 | 要件 |
|---|---|
| 会社 | 雇用保険適用事業所の事業主。職業能力開発推進者の選任と事業内職業能力開発計画の策定・周知が必要 |
| 受講する人 | その事業所の雇用保険被保険者 |
| 訓練 | 職務に直接関連する、10時間以上のOFF-JT(通常の業務を離れて行う訓練) |
| 計画届 | 訓練開始日の6か月前から1か月前までに管轄の労働局へ提出 |
| 費用・賃金 | 支給申請までに訓練経費を全額会社が負担。訓練期間中も適正に賃金を支払う |
| 支給申請 | 訓練終了日の翌日から2か月以内 |
計画届の期限を過ぎると対象になりません。「来月の講習に申し込んだので助成金も」では間に合わないことが多いので、年間の受講予定を早めに固めるのが第一歩です。
助成率・助成額
| 中小企業 | 中小企業以外 | |
|---|---|---|
| 経費助成(正規雇用労働者等) | 45% | 30% |
| 経費助成(有期契約労働者等) | 70% | |
| 賃金助成(1人1時間あたり) | 800円 | 400円 |
| 賃金要件・資格等手当要件を満たした場合の加算 | 経費+15%、賃金+200円 | 経費+15%、賃金+100円 |
| 1人1訓練あたりの経費助成の限度額 | 中小企業 | 中小企業以外 |
|---|---|---|
| 10時間以上100時間未満 | 15万円 | 10万円 |
| 100時間以上200時間未満 | 30万円 | 20万円 |
| 200時間以上 | 50万円 | 30万円 |
このほか、1事業所の1年度あたりの限度額は1,000万円、支給申請は労働者1人につき1年度3回までです。eラーニングや通信制の訓練は経費助成だけで、賃金助成は対象外です。
対象外になる講習 ─ 法定の講習に注意
パンフレットは、次のような訓練を助成の対象外としています(主なものを抜粋)。
| 対象外になるもの | パンフレットの例 |
|---|---|
| その業務を行うにあたり、法令等で事業主に講習等の実施が義務付けられているもの | 労働安全衛生法に基づく講習(法定義務のある特別教育など)、道路交通法に基づき事業者に科される法定講習、派遣法に基づく教育訓練 |
| 法令等で有資格者の設置が義務付けられており、その人に訓練をしなければ業務ができない場合 | 安全管理者の設置のための安全管理者選任時研修で、受講予定者以外に有資格者がいない場合 |
| 資格試験(講習を受けなくても単独で受験して資格を得られるもの)、適性検査 | ― |
| 職務に直接関連しないもの | 普通自動車運転免許の取得のための講習 |
一方で、労働者が資格を取得するための法定講習等は対象外から除かれると書かれています(例:施工管理技士を取得するための訓練、介護福祉士試験を受けるための訓練)。
技能講習がどちらに当たるかは、パンフレットに明示の例がありません。技能講習や選任時研修を計画に入れる場合は、計画届を出す前に管轄の労働局に確認してください。特別教育と技能講習の違いは特別教育と技能講習の違い、安全管理者の研修は安全管理者選任時研修は誰に必要かで整理しています。
資格手当を払うと加算がある
訓練のあとに次のどちらかを満たすと、助成が上乗せされます(別途申請)。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 賃金要件 | 訓練終了日の翌日から1年以内に、毎月決まって支払われる賃金を5%以上増やす |
| 資格等手当要件 | 資格等手当を就業規則・労働協約・労働契約等に規定したうえで、訓練終了日の翌日から1年以内に全ての対象労働者に支払い、毎月決まって支払われる賃金を3%以上増やす |
どちらも、対象労働者ごとに前後3か月の賃金総額を比べます。加算分の申請は、要件を満たす賃金または手当を3か月続けて払った日の翌日から5か月以内です。資格等手当とは、職務に関連した資格・知識・技能を持つ人に毎月決まって払う手当をいいます。
資格手当の加算を狙うなら、誰がいつ何の資格を取り、いつから手当を払ったかを記録しておく必要があります。申請には、手当を規定した就業規則等と、支払い前後3か月の賃金台帳などを添付します。
担当者がやること
- 年度初めに、社員ごとに受けさせる講習と訓練開始日を決め、その1か月前を計画届の締切として台帳に入れる
- 講習を「法定の義務(対象外の可能性)」と「職務の能力開発(対象になりうる)」に分けておく
- 職業能力開発推進者の選任と、事業内職業能力開発計画の策定・周知を済ませる
- 資格手当を払う場合は、規程・取得日・支払開始月を記録する
よくある質問
Q. 講習を受けさせたあとで申請できますか
できません。計画届を訓練開始日の6か月前から1か月前までに出していない場合は対象外です。
Q. フォークリフトなどの特別教育は対象になりますか
法定義務のある特別教育は、パンフレットで対象外の例に挙げられています。
Q. 要件は変わりますか
変わります。令和8年度も4月と8月に改正がありました。申請の前に、厚生労働省のページで最新のパンフレットを確認してください。
💡 社員の資格・講習を管理している方へ。有効期限が自動で色分けされる管理台帳テンプレート(Excel)を無料で配布しています。
まとめ
- 人材育成支援コースは、職務に直接関連する10時間以上のOFF-JTが対象。中小企業は経費45%・賃金1時間800円
- 計画届は訓練開始日の6か月前から1か月前まで。事後申請はできない
- 法定義務のある特別教育などは対象外。技能講習・選任時研修は事前に労働局へ確認
- 資格手当を規定して払い、賃金が3%以上増えれば加算がある
出典
- 厚生労働省「人材開発支援助成金」
- 厚生労働省・都道府県労働局「令和8年度版 人材開発支援助成金(人材育成支援コース)のご案内」詳細版(令和8年8月3日版)・概要リーフレット(令和8年4月8日版)
助成金の要件は年度途中でも改正されます。申請は管轄の都道府県労働局の助成金窓口で必ずご確認ください。
制度は改正されます。業種・事業場の規模・作業内容によって扱いが変わるため、実際の適用は所轄の労働基準監督署・都道府県労働局・講習の実施機関で必ずご確認ください。
